業界ナビ:アニメの絵コンテとは?書く際に必要なスキルや具体的な書き方を紹介

アニメの絵コンテとは?書く際に必要なスキルや具体的な書き方を紹介

アニメ制作における絵コンテは、脚本から具体的なイメージを描いたアニメーションの設計図とも呼ばれる重要な存在です。

監督や脚本家のイメージが詰まっており、アニメ制作過程でも必要不可欠な資料のひとつです。

アニメ制作の過程では、制作スタッフのほとんどが絵コンテを頻繁に確認するほど、重要な役割を担っています。

この記事では、アニメ制作における絵コンテとはなにか、絵コンテを作る監督や演出家の役割、絵コンテの描き方や必要なスキル、注意すべきポイントについて解説します。

アニメ制作工程


アニメ制作における絵コンテとは?

アニメ制作における絵コンテとは?

アニメ制作における絵コンテとは、脚本から具体的なイメージを描いた設計図のようなものです。

制作工程において多くのスタッフが利用する資料となるため、誰が見ても分かるような資料として作られています。

絵コンテは、絵を専門的に扱う演出家やコンテマンが描きあげることが多いですが、監督が自ら細かいポイントや要点などを加えながら描くこともあります。

絵コンテに記載される内容は以下の通りです。

  • 各シーンの時系
  • 構図
  • キャラクターなどの絵
  • キャラクターのアクションやリアクション
  • セリフやナレーション
  • 尺(時間)
  • 効果音

絵コンテは4コマ漫画のようなイメージで、起承転結が描かれています。

必要な原画や動画の枚数、ワンシーンの尺(時間)、キャラクターのアクション内容が描かれており、作品の完成イメージが分かるような構成です。

絵コンテをもとに原画マンが原画を描いていくため、キャラクターの表情や動作、仕草が分かるように描く一定以上の画力が必要です。

そのため、新人のアニメーターがすぐに担当できるポジションではありません。画力の高い人や映像作法を知っているクリエイターが、ステップアップして担当するのが一般的です。

また、脚本家や演出家の意図を具体化して絵に描く技術が必要になるため、作品イメージを汲み取るセンスや想像力も必要です。

作品のイメージを正確に汲み取れなかった場合、作品の完成に影響を与えてクオリティを下げる要因になる場合もあります。

監督や演出家が描く絵コンテの役割

監督や演出家が描く絵コンテの役割

ここでは、監督や演出家が描く絵コンテの役割について解説します。

作品のイメージを具体化するため

絵コンテは、アニメ監督や演出家がアニメ作品のイメージを具体化し、ストーリーの流れやシーンの構成を確立するための資料です。

監督と演出家は作品のイメージを明確にし、視聴者に伝えたいメッセージや感情を効果的に伝えるために絵コンテを描きます。

監督は作品全体のビジョンを把握し、絵コンテを通じてストーリーの核心を表現します。

キャラクターの表情や動き、背景のディテールなどを考慮しながら、作品の一貫性と魅力を確保します。

一方、演出家は監督の指示に基づいて各シーンの流れや演出を具体化し、視覚的な魅力を生み出す役割を果たします。

絵コンテはアニメ作品の基盤となる台本であり、監督と演出家が協力して作り上げ、優れた連携と創造力により作品の世界観や感動を視聴者に伝えることができます。

監督と演出家が絵コンテを通じて作品イメージを具体化することは、作品の成功に欠かせない要素といえるでしょう。

アニメ制作チーム内で監督の考えを共有するため

アニメ制作における絵コンテは、アニメ制作チーム内で監督の考えを共有するために必要です。

アニメ全体の構成が描かれた絵コンテは、監督の考え方が反映された台本でもあるため、思想やイメージ像、キャラクターの表現方法、シーン別の重要性など、監督の考えが分かります。

絵コンテを通して監督の考えがチーム内で共有されることによって、チーム全体が一貫したビジョンを持ち、スムーズに作業を進めることができるでしょう。

また、監督の考えを全体で共有することは、制作過程での意見の食い違いやコミュニケーションの不足を防ぎ、クオリティの高い作品を生み出すカギとなります。

完成後のミスマッチを防ぐため

監督や演出家が描く絵コンテには、作品完成後のミスマッチを防ぐための役割があります。

絵コンテには、尺の長さ、キャラクターの動きなどの流れが細かく描かれており、アニメの最終形に近いイメージを提示し、制作チーム全体の共通認識を形成します。

事前にしっかりとしたイメージ像を絵コンテで表現することは、制作の効率性だけでなく、作品のクオリティや完成度にも大きな影響を与えます。

絵コンテ作成においては、物語の要点を押さえつつ、視聴者だけでなく制作スタッフにもイメージが伝わるように表現することがカギといえるでしょう。

絵コンテを描く際に必要なスキル

絵コンテを描く際に必要なスキル

絵コンテを描く際には、以下のようなスキルが求められます。

  • 脚本のイメージを具体化できる能力
  • 最低限の基礎画力
  • カメラワークなどの映像表現力

ここでは、絵コンテを描く際の必要スキルについて解説します。

脚本のイメージを具体化できる能力

絵コンテを描くために重要なスキルは、脚本のイメージを具体化する能力です。

脚本のイメージをうまく落とし込みができない場合、制作過程の作業だけでなく、最終的な作品のクオリティにも影響を与えてしまうでしょう。

絵コンテ作成は単なる描写ではなく、脚本の核心を捉え、それをビジュアルに表現することが重要です。そのためには、豊かなイメージ力と具体化するスキルが欠かせません。

アニメ制作において核となる絵コンテの作成には、脚本から具体的なイメージを引き出し、ストーリーをビジュアル化できる能力が求められます。

最低限の基礎画力

絵コンテは、アニメーション制作の細かい道筋を示し、アニメーターなどの制作スタッフが作品を完成させるために必要な資料となります。

そのため、誰もが分かるような絵を描ける最低限の基礎画力が必要です。

絵コンテをうまく描く人は、全体の構成を把握する能力と同時にキャラクターの表情や動きを正確に描き出す技術を持っています。

絵コンテ制作においては、一定水準の画力があることで視覚的な表現力が向上し、アイディアを効果的に形にすることができるでしょう。

また、制作開始前の段階の絵コンテが優れていれば、後工程での手戻りや修正が減り、作品全体のクオリティを高めることができます。

カメラワークなどの映像表現力

カメラワークなどの映像表現力も必要な能力です。

キャラクターを顔のアップで捉えたり、全身が画面に入るようなサイズで捉えたりすることは、絵コンテで決めます。

適切なカメラアングルやショットの選択は、視聴者に物語を伝えるうえで重要な要素となります。映像表現力を活かしつつ、感情や緊張感を引き出すためには、絵コンテにおけるカメラワークの使い方が重要です。

そのため、絵コンテを描く際は、カメラワークを考慮しながら物語の流れや動きのあるシーンの構成を細部まで描き出す映像表現力が求められます。

カメラワークの巧妙な活用や映像表現力の豊かさは、視聴者に深い印象を残し、作品の魅力を引き立てます。

これらの要素を織り交ぜながら絵コンテを作成することが、魅力的なアニメ作品を生み出すカギとなるでしょう。

絵コンテの具体的な描き方

絵コンテの具体的な描き方

絵コンテの作成は、基本的に以下の手順で行われます。

  1. 脚本からアニメのイメージや目的、ターゲットを明確にする
  2. セリフやナレーション、絵の説明を文章で書く
  3. カット割りを決めて構図を明確にする
  4. 具体的で分かりやすい絵を描く

ここでは、絵コンテの具体的な描き方を手順に沿って解説します。

脚本からアニメのイメージや目的、作風を明確にする

まず、脚本からアニメのイメージや目的、作風を明確に理解することから始まります。

どのような世界観のアニメなのか、どのようなメッセージを伝えたいのかなど、作品が発信するイメージを明確にしてください。

シリアスな作品なのか、ギャグ作品なのか、SFアクションなのかなど、作風によって絵コンテの描き方は異なります。

また、映像のテンポを決めるのも絵コンテです。同じストーリーの脚本でも、テンポが悪いと面白くない作品になります。

セリフやナレーション、絵の説明を文章で書く

セリフやシナリオなど、絵の説明となる原稿を文章で書いていきます。

絵コンテは絵を先に描くと思われがちですが、基本的にセリフやナレーションなどの絵の説明を先に書きます。

絵を先に描いてしまうと絵とセリフがマッチしない不自然な絵コンテが作られてしまい、その後の原画作成にも影響を及ぼします。

絵と文章のミスマッチを防ぐためにも、セリフやナレーションなどの文章から書いていくようにしましょう。

カット割りを決めて構図を明確にする

絵の説明となる文章を書いたら、カット割りを決めて構図を明確にしていきます。カット割りとは、シーンごとの構図やシーンとシーンのつなぎのことです。

前工程で書き込んだセリフやナレーションなどを基準に、カット割りを決定します。

時間を測って等間隔でシーンを区切ったり、カメラの引きや寄りなどのアングルに変化がある演出で区切っていくのがよいでしょう。

ただし、絵コンテのカットは長くなりすぎないように、基本的なカットは3秒前後、長くても5~6秒以内におさめるようにします。

1カットの秒数が長い場合、視聴者がアニメが止まっていると錯覚する場合があるため、1カットごとの秒数はとても重要です。

具体的で分かりやすい絵を描く

セリフやカット割りが決定したら、具体的で分かりやすい絵を描いていきます。

絵コンテは、アニメーション制作の初期段階で作成され、原画マンや動画マンが作業の参考にする大切な資料です。

より具体的な絵と説明が描かれていることが重要であり、絵コンテの内容が具体的であるほど、完成イメージのズレも防ぐことができるでしょう。

例えば、どのキャラクターが登場して、どのような表情をうかべ、どのような動きをするのかが明確に分かるような絵コンテの作成が理想的です。

絵コンテを描く際に気をつけたいポイント

絵コンテを描く際に気をつけたいポイント

絵コンテを描く際は、以下の3つのポイントに注意してください。

  • 絵の上手さよりも分かりやすさを優先する
  • メッセージはシンプルに伝える
  • 放送される媒体にあわせた縦横比のコマに書く

ここでは、絵コンテを描く際に気をつけるポイントを解説します。

絵の上手さよりも分かりやすさを優先する

絵コンテは、作画や動画のように実際のアニメに直結する絵とは異なり、スタッフが確認するラフ画の台本になるため、クオリティよりも情報の分かりやすさが優先されます。

もちろん最低限の画力は必要ですが、それよりも作画担当や撮影スタッフに完成イメージを伝えられるかどうかが重要です。

描かれた絵コンテをもとに原画マンが原画を描くため、伝えたい情報が分かりにくい絵コンテだと、作業スピードが落ちて生産性も下がってしまうでしょう。

そのため、絵コンテは誰が見ても分かりやすく、適切に指示が伝わるように描いていくのがポイントです。

メッセージはシンプルに伝える

絵コンテで伝えたいことがある場合は、できるだけシンプルに伝えましょう。

絵コンテには、絵だけでなく必要な情報を文字でコメントする場合がありますが、このコメントは作画担当や撮影スタッフのためにシンプルに書くのが理想的です。

絵コンテで伝えたいメッセージが複雑だった場合、作業ミスの原因になったり修正が加えられたりと、無駄な作業が増えてしまう原因になりかねません。

絵コンテは、アニメ制作に関わるスタッフが情報を共有するためのものであるため、具体的で分かりやすい絵とともに、メッセージはシンプルな形で伝えるように心がけましょう。

小さな意識がアニメ制作全体のスピードに直結し、作品のクオリティを向上させます。

放送される媒体にあわせた縦横比のコマに書く

絵コンテは、実際の映像と同じ縦横比で描くのがポイントです。

アニメを放送する媒体(テレビ放送、インターネット番組、SNS等)により、縦横比のサイズが異なる場合があります。

スタンダードな絵コンテ用紙には、昔のテレビ画面のサイズに合わせた縦横比4:3、最近のワイドテレビに合わせた縦横比16:9があります。

基本的には16:9のコマで描かれるのが主流ですが、実際にアニメが放送される媒体を事前に確認し、縦横比を合わせたコマに絵コンテを描くようにしてください。

まとめ

アニメーション制作における絵コンテとは、カットごとのキャラクターのセリフや動き、位置など、全体の流れが分かる設計図のようなものです。

アニメのイメージが具体化された絵コンテは、制作工程のさまざまな場面で使用される全スタッフの台本ともいえる存在です。

絵コンテの作成には、監督や脚本家の持つイメージを理解し、そのイメージを正確に具体化できる能力が求められます。

しかし、このスキルはアニメ制作会社に入ったとしても独学で簡単に身に付けられるようなものではありません。

代々木アニメーション学院では、絵コンテの作成に必要な基礎デッサン力を学べるだけでなく、脚本の内容を絵で起こすためのカリキュラムを用意しています。

将来、絵コンテの作成に携わった際には力となってくれるスキルです。

アニメ業界を目指す方は、お気軽にご参加ください。

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