業界ナビ:原画マンになるには?必要なスキルと具体的な仕事内容を解説
原画マンは、アニメの基礎となる原画を作成するスタッフです。
多くのフレームによって動くアニメは原画をもとに作られているため、原画はアニメの基盤といっても過言ではない重要な役割を担っています。
その要となる存在を描く原画マンは、アニメーターのポジションの中でも憧れるポジションの一つです。
この記事では、原画マンとはどのようなポジションなのか、仕事内容や必要なスキル、向いている人や原画マンになる方法を解説します。
原画マンとは?
原画マンとは、映像の設計図である絵コンテを見て、キャラクターの演技(動き)を作るポジションのスタッフです。
日常芝居からアクションまでキャラクターの動きを一枚一枚の絵で描いて作っていきます。キャラクターに演技をさせているのが原画マンですので、実写映画でいうと役者に相当します。
動作にかかる全ての枚数の絵を描くのではなく、動きのポイントとなる絵を描いていくので、海外ではkey animatorと呼ばれています。
原画マンが描いた絵だけでは滑らかには動かず、原画と原画の間に動きの途中の絵を何枚も描く必要があります。その作業を行うのが動画マンです。動画マンは原画マンが描いた動きのポイントとなる絵をもとにして途中の絵を作るので、原画マンほどの高い画力や動きを作る力が無くてもできる仕事です。
原画マンになるためには、まず動画マンとして仕事を数多くこなしていくことが大切です。動画作業を行う中で、原画の絵の描き方や、動かし方のポイントを学んでいきます。
原画マンはキャラクターが動くための空間も画面の中に作ります。これは、透視図法(パース)という技法を使用して描きます。実写映画ではカメラマンに相当する感覚も必要です。どのようにテレビ画面の中でキャラクターを捉えるか、画面にアップで描くか、上から見た俯瞰で描くか、下から見たアオリで描くかなど考え、レイアウトという画面の構成を行うのも原画マンです。原画マンは実写映画でいうと俳優でありカメラマンであるので、高度な専門職でもあります。ただし、最初からその二つの力を持ち合わせている人は少なく、技術の訓練で力をつけていきます。
専門の学校で学んだ人は、訓練をしているのでアニメ制作会社に入社して1~3年で原画マンに昇格していきます。訓練をしていない人は、入社して5~10年かかる場合があります。
原画マンの仕事内容
ここでは、実際のアニメ制作の流れに沿いながら原画マンの仕事内容について詳しく紹介します。
アニメの詳細を確認する
原画マンは担当するアニメが決定すると、キャラクターの設定や構成図、レイアウト用紙など必要書類を受け取ります。
キャラクター設定や構成図、絵コンテを確認し、担当するアニメの全体像を把握するのが現段階における仕事です。
作画監督や演出家が作成する絵コンテには、登場人物のセリフや動き、位置など、各カットの画面構成が絵と文字で書かれており、全体の流れを把握するための大切な資料です。
原画マンはこの資料をもとに完成イメージを汲み取り、打ち合わせに向けて自分の持つ完成イメージを作画監督や演出家に伝える準備を行います。
演出家や作画監督と打ち合わせ
絵コンテやキャラクター設定などの資料から、担当するアニメの全体像を把握したら、演出家や作画監督と細かい打ち合わせが行われます。
視聴者に対してどのような表現法を使うのか、キャラクターの表情など、演出家や作画監督が作品のなかでこだわりたい部分をインプットして念入りに打ち合わせを行います。
この段階で作品の意図を汲み取れない場合、演出家や作画監督のイメージする作品が作れません。
原画マンと演出家、作画監督の間でズレがおきないように、疑問点はこの時点で解消しておきましょう。
レイアウトやタイムシートを作成
打ち合わせが終わると、原画マンはレイアウトとタイムシートを作成します。
レイアウト用紙に背景やキャラクターの位置、動きをおおまかに描きます。この段階でキャラクターのイメージや表情、背景など細かな部分を作画監督に確認しておきましょう。
原画マンは、作画監督の指示やイメージを考慮しながらレイアウトを完成させます。
また、レイアウトを作成する際に動画の指示書にあたるタイムシートも作成します。原画は静止画ですが、原画を動かすための中割りには膨大な動画枚数が必要になるため、どのコマでどの絵を入れて効果を加えていくかなど、動画の詳細を記入していきます。
レイアウトとタイムシートが完成したら、作画監督へ提出してチェックしてもらいます。
作画監督は、このレイアウトに作品として問題になる部分がないかをチェックし、修正箇所があれば修正用紙とともに原画マンへ戻されます。
第二原画の作成
レイアウトやタイムシートが完成すると、第ニ原画と呼ばれる清書の原画を描いていきます。
原画マンが描いた第ニ原画は、作画監督のチェックを再び受け、作画監督からOKがでれば動画マンのもとに送られ、トレースおよび中割りによって原画に動きが付けられていきます。
30分のテレビアニメでも300~400枚ほどの原画が必要になるため、原画マンはシーンごとの原画を次々に描いていかなければいけません。
原画の完成が遅れてしまうと、後の動画マンのトレースや中割りも遅れ、プロジェクト全体に大きな影響を与えてしまいます。
しかし、原画作成のスピード感が求められるだけでなく、動画マンがスムーズにトレースできるように丁寧に描く技術も必要です。
丁寧に描かれた原画が動画マンへ渡ることで、作品全体の作業効率が上がります。
原画マンに必要なスキル
原画マンは、絵コンテをもとにゼロから原画を描いていくため、基礎画力とともに以下のようなスキルが求められます。
- 原画を描くスピード
- キャラクター設定や動きを理解する理解力
ここでは、原画マンに必要なスキルを紹介します。
原画を描くスピード
原画マンには、原画を描くスピードが求められます。
一般的に30分のアニメを1話完成させるには、300~400枚の原画が必要となり、動画枚数は3,500~4,000枚必要だといわれています。
その膨大な数の原画を完成させなければ、動画マンによるトレースや中割りなども進んでいかないため、アニメが完成しません。
しかし、描かれた原画は作画監督の目を通してから動画マンの手元に届くため、完成してすぐに動画マンが作業を行えるわけではありません。
そのため、スピーディに原画を描くスキルが求められます。
一人の原画マンがすべての原画を描くわけではなく、20~30名ほどの原画マンが分担して作品に必要な原画を描いていきますが、それでも一人あたりが描く原画枚数はかなりのものです。
原画の完成が遅れてしまうと、全体の進捗に大きな影響を与えてしまうため、スケジュール通りにすばやく原画を描く能力が必要になるわけです。
また、原画マンは原画を描くスピードだけでなく、一枚の原画からキャラクターのイメージや感情、細かい表情を伝えられる画力も求められます。
キャラクター設定や動きを理解する能力
キャラクター設定や動きを理解する能力も原画マンには必要なスキルです。
一枚の原画の中でキャラクターは何を思い、どのような表情でどのような動きしているのか、一つの動きの違いでシーンの印象は大きく変わってしまいます。
特にキャラクターの特徴となる動きの理解が浅い場合、作品全体のイメージが崩れ、目指すべき完成イメージからかけ離れた作品となってしまうでしょう。
そのため、原画マンには各キャラクターの設定や動きを事前に理解する能力が必要です。
また、完成した原画は動画マンへ渡されるため、原画の意図やイメージを的確に伝えられるような能力も求められます。
原画マンに向いている人
原画マンに向いているような人の特徴は以下の通りです。
- 絵を描くことが好きな人
- スケジュール管理が得意な人
あくまで一例ですが、原画マンに向いている理由とともに解説します。
絵を描くことが好きな人
絵を描くことが好きな人は原画マンに向いています。特に自分で考えたオリジナルの絵を描くよりも、アニメやマンガゲームの絵を真似して描くことが好きな人は向いています。
模写することが好きなだけでなく、二次創作など既成のキャラクターを使ってイラストを描くような人も向いています。
アニメーターはマンガ家と違い、自分のオリジナルの絵を描く機会は少ないです。マンガなどの原作がある作品の原画を描くことが多いため、キャラクターデザインで独創的な表現をしたい人、オリジナリティを出したい人には向いていません。
アニメーターは、既にあるキャラクターをそっくりに表現することができる「職人」です。これは模写の訓練で身に付きます。
絵の世界でプロになるために避けては通れない技術が、絵を描くスピードです。マンガ家もイラストレーターもアニメーターも、仕事には必ず締め切り、作品の納期があります。いくら素晴らしい絵でも、完成に何か月もかかって締め切りに間に合わないと仕事になりません。プロは絵を描くスピードを大事にしています。絵を描く事が好きで、完璧主義よりも早く描く方が楽しいと感じる人は向いています。
そして、アニメーションを作ること、自分が描いたキャラクターが動くことに喜びを感じる人は、アニメーターに向いています。
スケジュール管理が得意な人
スケジュール管理が得意な人は原画マンとしてのポジションが適任です。
全体のスケジュールを把握して原画を完成させなければ、後に引き継ぐ動画マンなどのスケジュールにも大きな影響を与えてしまいます。
そのため、現在の進捗状況をしっかりと把握してスケジュール通りに作業を進められるような人が原画マンに向いています。
また、アニメ制作の現場では、すべての工程に期日が決められており、各ポジションのスタッフが期日を守って作業を進めています。
一つの作業でも期日に間に合わなかった場合、作品のリリースが遅れてしまう可能性があるため、期日の遅れは絶対に許されません。
つまり、原画マンにはスケジュール通りに作業をできる管理能力とともに、期日の遅れを許さないような責任感の強い人が向いているといえるでしょう。
原画マンになるには
原画マンになるのに特別な資格などは必要ありませんが、原画を描く画力やスピード、知識を身につけるとともに、動画マンとしての経験を積む必要があります。
ここでは、原画マンになるために必要なポイントについて解説します。
専門の学校で知識やスキルを身につける
原画マンになるには、アニメーションの専門の知識と、キャラクターを動かす技術が必要です。
絵心があっても素人の状態でアニメ制作会社に入社して、アニメーターの仕事をすることは困難であることが現場の現状です。独学でアニメの技術を身に付けることは難しいため、プロになる場合は一般的にアニメの専門の学校に通って技術を学びます。
学校では、アニメーターに必要な動画・原画の技術を学び、力を高めていくことができます。
代々木アニメーション学院は、創立から45年以上アニメーター教育を行っていますので、初心者が基礎から学べて現場で直ぐに活躍できる力が身につくカリキュラムが構築されています。また、最新のデジタル技術も学べますので、デジタルで動画、原画を描けるアニメーターになることができます。
講師は現役プロのアニメーターが在籍しており、現場の生の技術を教えています。
アニメ業界に数多くの卒業生がいますので求人数も多く、プロ講師が担任として就職もサポートしてくれますので安心です。
アニメーターになりたい人、原画マンとして活躍したい人は、アニメーター科で基礎から学んでいくと良いでしょう。
動画マンとしてアニメ制作会社でステップアップを目指す
原画マンとして必要な知識や技術を学んで学校を卒業した後は、一般的にアニメ制作会社への就職を目指します。
しかし、アニメ制作会社へ就職したとしても、すぐに原画マンとして活躍できるわけではありません。
入社して数年間は先輩のサポートを行いながら、原画のトレースや中割りを行う動画マンとしての業務が中心です。
動画マンは給料も低く厳しい世界といわれていますが、そのなかで膨大な量の原画のトレースや中割りを行っていくことが経験となり、原画マンとしてのキャリアアップを目指せます。
動画マンから原画マンへの道のりは過酷ですが、現役で原画マンとして活躍する人の多くは、アニメ制作会社で動画マンから原画マンへとキャリアアップした人たちばかりです。
原画マンを目指すのであれば、諦めずに動画マンとしての経験を積んでいきましょう。
まとめ
原画マンは、アニメの基礎となる原画を作成するポジションのスタッフです。絵コンテをもとに描かれた原画は、アニメの基盤となる重要な役割を担っています。
原画マンになるには、基礎画力や原画を描くスピード、作品イメージを正確に理解して描く力が求められます。
それらの技術や知識を養い、動画マンとしての経験を積んだうえでなれるのが原画マンです。
動画マンとしての経験は過酷にはなるものの、膨大な数のトレースや中割りを行っていくことで、原画マンに必要な技術が身についてくるでしょう。
代々木アニメーション学院では、液晶タブレットを使用して、デジタル作画に対応可能な作画法を基礎から応用まで学べます。
また、就職の際に有利になるポートフォリオの制作方法の指導、キャラクターデザイン、原画実習など、アニメ業界で活躍するために必要なスキルを学べるカリキュラムを用意しています。
代々木アニメーション学院で学ぶことで、将来アニメ業界で働く際に戦力となる技術を身につけることができるでしょう。
原画マンを目指すために、アニメ制作に関わる基本から応用まで、幅広い知識や技術を身に着けたいのであれば、代々木アニメーション学院にお気軽にお問い合わせください。