業界ナビ:アニメに関わる仕事とは?制作現場の職種を解説します! 絵が描けなくても大丈夫!!
日本のアニメーションは、世界中で愛される文化コンテンツとして急成長を続けています。Netflixや世界最大級のアニメ配信サービスCrunchyrollなどのプラットフォームの普及により、アニメ産業の市場規模は2兆円を超え、特に海外市場が国内市場を上回る勢いで拡大しています。
「アニメ業界で働きたい」そんな夢を抱く人は数多くいます。しかし、具体的にどのような仕事があるのか、どうすれば業界で働けるのか分からない方も少なくありません。
実はアニメ業界には、絵を描く仕事以外にも驚くほど多様な職種が存在します。企画、音響、マーケティング、宣伝など、文系出身者や未経験者でも活躍できるフィールドが広がっているのです。
本記事では、アニメに関わる仕事について、「製作」と「制作」の両面から職種を詳しく紹介し、必要なスキルや業界を目指す方法まで徹底解説します。アニメ業界への就職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
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アニメに関わる仕事の全体像
アニメ作品は、企画から完成、そして視聴者に届けるまで、多くのプロフェッショナルが協力して作り上げる総合芸術です。1つの30分アニメには、制作会社、テレビ局、出版社、音響スタジオ、広告代理店など様々な企業が関わり、100名以上のスタッフが携わることも珍しくありません。
「製作」と「制作」の違いを知ろう
アニメ業界では「製作」と「制作」を明確に使い分けています。この違いを理解することが、アニメ業界で働く第一歩となります。
* 製作:企画立案、資金調達、宣伝戦略などビジネス面を担当
* 制作:実際にアニメーションを作る現場の仕事
現代のアニメ制作現場は大きく変化しています。手描きアニメーションに加え、3DCG技術やデジタル作画が主流となりつつあり、プログラミングスキルを持つエンジニアやデータ分析の専門家など、新しい職種も次々と生まれているのです。
アニメ制作現場の職種(プリプロダクション)
監督・演出 〜作品の魂を吹き込む〜
監督は作品の芸術的な方向性を決定し、制作チーム全体を指揮します。作品全体のビジョンを持ち、各部門と連携しながら作品を完成に導く、まさに船長のような存在です。
演出は監督の意図を汲み取り、各話の絵コンテ作成や作画スタッフへの指示出しを行います。カット割りやカメラワーク、タイミングなど、映像演出の専門知識が求められる職種です。各話ごとに配置され、実際の映像作りの中核を担います。
脚本・シリーズ構成 〜物語の設計者〜
シリーズ構成は全話を通じての物語の流れを設計します。1クール(3ヶ月)なら12話、2クール(6ヶ月)なら24話という限られた尺の中で、どのように物語を展開させるか。それを考えるのがこの仕事の醍醐味です。
脚本家は具体的なセリフや場面を書き上げます。原作がある場合でも、アニメーションに適した形にアレンジする必要があり、映像表現への理解と文章力の両方が求められます。
キャラクターデザイン・美術設定
キャラクターデザイナーは登場人物の外見をアニメーション用にデザインし、作画の基準となる設定資料を作成します。キャラクターの魅力が作品の成功を左右することもあるため、非常に重要な役割です。
美術監督は作品全体の美術設定を決定し、世界観を視覚的に構築します。背景のコンセプトアートから具体的な美術ボードまで、作品の雰囲気を決定づける重要な役割を担います。
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アニメ制作現場の職種(プロダクション)
作画部門 〜動きに命を与える〜
アニメーションの要となる作画部門には、さまざまな専門職が存在します。
原画マンは動きのキーとなる絵を描き、アニメーションの要となる重要なポーズを作成します。1カット数枚から、複雑なアクションシーンでは数十枚にも及ぶ原画を描きます。
動画マンは原画と原画の間を埋めて滑らかな動きを作ります。新人アニメーターは通常、動画から始めて経験を積みます。地味に見えるかもしれませんが、アニメーションの基礎を学ぶ重要なステップです。
動画検査は、動画マンが描いた動画の品質をチェックし、修正指示を出す役職です。作画の流れを理解し、品質管理の要となります。
総作画監督は全話を通じて作画品質を管理し、キャラクターの統一性を保ちます。「第1話と最終話でキャラクターの顔が違う」なんてことがないよう、全体を見渡す重要な役割です。
背景美術
背景美術スタッフは美術監督の指示のもと、実際の背景を描きます。近年では3DCGを活用した背景制作も増えており、PhotoshopやBlenderなどのツールを駆使して、作品世界を描き出します。
学校の教室、ファンタジー世界の城、近未来都市の風景。さまざまな世界観を表現するため、幅広い知識と技術が求められます。
仕上げ・色彩設計
色彩設計はキャラクターや背景の色を決定し、作品全体の色彩設計図を作成します。朝と夕方、喜びと悲しみ。時間帯や感情表現に応じた色の変化も設計する、繊細な仕事です。
仕上げスタッフは実際に色を塗る作業(仕上げ)を行います。デジタル化により効率化されましたが、より繊細な色彩表現が求められるようになりました。
3DCG部門
3DCGクリエイターは3dsMaxやMaya、Blenderなどを使用して、キャラクターモデリングや背景制作、メカニックデザインを行います。特にロボットアニメやアクションシーンでは欠かせない存在となっています。
CGディレクターは3DCGパートの演出や品質管理を担当し、2D作画との融合を図ります。「いかに違和感なく2Dと3Dを共存させるか」が腕の見せどころです。
アニメ制作現場の職種(ポストプロダクション)
撮影・コンポジット
撮影監督・撮影スタッフは作画された素材を合成し、特殊効果を加えて最終的な映像を作ります。After Effectsなどを使用したデジタルコンポジットが中心で、光の演出や画面効果など、作品の雰囲気を大きく左右します。
「撮影」という名前ですが、カメラで撮るわけではありません。すべての素材を組み合わせ、エフェクトを加えて、私たちが観る「完成したアニメ」にする重要な工程です。
編集
編集は各カットをつなぎ合わせ、作品のテンポやリズムを調整します。尺の調整や場面転換のタイミングなど、物語の流れを最適化する重要な役割です。たった1秒、いや0.5秒の違いで、作品の印象は大きく変わります。
音響関連職
音響部門には、作品に命を吹き込む様々なプロフェッショナルがいます。
音響監督は声優の演技指導や効果音の選定、BGMの配置を行い、音響面から作品の魅力を引き出します。「このシーンにはこの音楽」「ここは無音の方が効果的」など、音の演出家といえるでしょう。
音響効果スタッフは効果音の制作・選定を担当し、作品世界に臨場感を与えます。剣がぶつかる音、風が吹く音、ドアが開く音。すべての音が作品世界を豊かにします。
録音エンジニアは収録作業を担当し、Pro Toolsなどを使用して高品質な音声収録を行います。声優の演技を最高の状態で録音する、技術と経験が必要な仕事です。
ミキサーは音のバランス調整を行い、セリフ、効果音、BGMを最適なバランスでミックスします。「セリフが聞き取りにくい」「BGMがうるさい」なんてことがないよう、細心の注意を払います。
アニメ製作・ビジネス関連の職種
プロデューサー 〜プロジェクトの司令塔〜
プロデューサーは作品の企画立案から予算確保、スケジュール管理まで、プロジェクト全体を統括します。製作委員会方式が主流の現在では、複数企業との調整能力が求められます。
億単位の予算を動かし、数百人のスタッフをまとめ上げる。まさにビジネスパーソンとしての手腕が問われる仕事です。
宣伝・広報 〜作品の顔〜
作品の認知度向上のため、プレスリリース作成、メディア対応、試写会の企画運営などを担当します。SNSでの話題作りから、テレビや雑誌への売り込みまで、作品の魅力を最大限に伝えるための戦略立案が重要です。
「面白い作品を作っても、知られなければ意味がない」そんな現実と向き合い、作品を世に広める重要な役割です。
マーケティング・プロモーション
デジタルマーケターはSNS運用、Web広告展開、データ分析などを通じて、作品の認知拡大を図ります。「バズる」施策を考え、実行する。現代のアニメビジネスには欠かせない存在です。
グッズプランナーは関連商品の企画・展開を担当し、作品の世界観を商品に落とし込みます。フィギュア、アクリルスタンド、Tシャツ。ファンが「欲しい!」と思うグッズを生み出します。
ライセンス営業
国内外の企業に対して、作品の配信権、放送権、商品化権などの販売交渉を行います。特に海外展開においては、各国の市場特性を理解した戦略が必要です。
アニメがグローバルコンテンツとなった今、この仕事の重要性はますます高まっています。
イベントプランナー
声優イベント、展示会、コラボカフェ、舞台挨拶などの企画・運営を担当します。ファンとの接点を作り、作品への愛着を深める重要な役割です。
「推しに会える」「作品の世界観を体験できる」そんな特別な体験を作り出す、クリエイティブな仕事です。
絵を描かなくても活躍できる仕事
「アニメ業界=絵が描けないとダメ」は大きな誤解です。実は絵を描かない仕事の方が多いくらいなのです。
制作進行・制作デスク
制作進行は各部門の橋渡し役として、スケジュール管理や素材の受け渡しなど、作品を予定通りに完成させるための調整業務を担当します。
社内だけでなく他社の仕上がりを回収しに行くなど朝から晩まで走り回ることもありますが、作品完成の立役者として、やりがいは十分。高いコミュニケーション能力と管理能力が求められます。
制作デスクは制作進行を統括し、予算管理や外部スタジオとの交渉も担当します。制作進行からのキャリアアップとして、代表的なキャリアパスの1つです。
制作管理システム担当
デジタル化が進む制作現場で、データ管理やワークフローの最適化を担当します。制作支援ツールの開発や導入も行う、IT系の専門職です。
テクニカルディレクター
制作パイプラインの構築や効率化ツールの開発を担当します。プログラミングスキルは必要ですが、絵を描く能力は必須ではありません。技術の力で制作現場を支える、縁の下の力持ちです。
音響制作
声優のキャスティング、スケジュール調整、スタジオブッキングなど、音響制作の進行管理を担当します。声優事務所との交渉や、収録スケジュールの調整など、マネジメント能力が問われます。
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アニメ業界で求められるスキル
技術的スキル
デジタルツールの操作能力は必須です。職種によって求められるソフトウェアは異なりますが、基本的なPCスキルは全職種で必要となります。
* 作画部門:CLIP STUDIO PAINT、TVPaint
* 撮影部門:After Effects、Nuke
* 3DCG部門:Maya、Blender、3ds Max
* 音響部門:Pro Tools、Cubase、Logic Pro
* 基本ソフト:Word、Excel、PowerPoint
コミュニケーション能力
アニメ制作はチームワークが重要です。自分の意見を的確に伝え、他者の意見を理解する能力は、どの職種でも必須となります。
特に制作進行やプロデューサーなど調整役では、高度なコミュニケーション能力が求められます。「伝える力」と「聞く力」、その両方が大切です。
情熱と学習意欲
正直に言います。アニメ制作は長時間労働になることも多く、締切りのプレッシャーも大きい仕事です。
しかし、「良い作品を作りたい」という情熱が困難を乗り越える原動力となります。また、技術革新が速い業界のため、新しい技術を積極的に学ぶ姿勢も不可欠です。
専門知識と創造性
各職種に応じた専門知識に加え、新しいアイデアを生み出す創造性も重要です。既存の枠にとらわれない発想が、革新的な作品を生み出します。
「こんな表現、見たことない!」そんな驚きを生み出せるクリエイターが、業界では求められています。
アニメ業界を目指す方法
専門校で学ぶ
専門校では業界で必要な知識とスキルを体系的に学べます。現役プロの講師から実践的な指導を受けられ、在学中から実際の制作に参加する機会もあります。
産学連携プロジェクトやインターンシップを通じて、就職に有利な実績を作ることができます。同じ夢を持つ仲間との出会いも、大きな財産となるでしょう。
制作会社への就職
大手制作会社では定期的な新卒採用を行っています。職種によっては未経験でも応募可能です。
中途採用では、IT業界からCG制作部門へ、広告業界からマーケティング部門へなど、前職の経験を活かせる転職も歓迎されます。異業種からの転職組が、新しい風を吹き込むこともあります。
アルバイトから始める
多くの制作会社でアルバイトや契約社員を募集しています。制作進行アシスタントなど、経験が浅くても始められる職種から、徐々にスキルを身につけていく道があります。
現場での実績が認められれば、正社員への登用も可能です。「まずは飛び込んでみる」という選択肢も、決して悪くありません。
ポートフォリオの準備
特にクリエイティブ職では、自分の実力を示すポートフォリオが重要です。継続的に作品を制作し、スキルアップを図ることが大切です。
「下手でもいいから、たくさん描く」「1つでも多く作品を仕上げる」その積み重ねが、プロへの道を開きます。
代々木アニメーション学院でアニメ業界を目指す
代々木アニメーション学院は、1978年の創立以来、12万人以上の卒業生を輩出してきた日本を代表するエンタメ専門校です。アニメ製作委員会への参画やプロダクション運営など、「エンタメの当事者」として得た経験をカリキュラムに反映させています。机上の空論ではない、リアルな業界知識を学べます。
現役プロの講師陣による実践的な指導、在学中から参加できる制作プロジェクト、業界との強いつながりを活かした就職サポートなど、アニメ業界で活躍するための環境が整っています。全国に校舎を展開し、2025年からは大学部も開設。フルリモート校もあり、どこからでも学べる体制を整えています。代アニだけの求人情報や学内オーディションなど、夢を実現するためのサポート体制が充実しています。
総合学部という新たな学び方
代々木アニメーション学院は2026年4月から「アニメ・クリエイター総合学部 、エンターテイメント総合学部」を開講します。これは、アニメ・エンタメ業界に興味はあるけれど、どんな職業に就くか決めきれていない人のための学部です。最初の1年間は業界について総合的に学び、自分の特性を把握したうえで、2年目から代アニの各学科で専門的に学ぶという流れです。アニメに関わる仕事が気になっている方は、総合学部で学ぶという選択肢もあります。
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夢を現実にするために
アニメ業界は創造性と情熱が評価される、やりがいのある業界です。技術革新と市場のグローバル化により、新しい表現方法や世界中に作品を届ける機会が広がっています。
製作から制作まで、実に多様な職種が存在し、それぞれが重要な役割を担っています。絵が描けなくても、文系出身でも、未経験でも。あなたの強みを活かせる場所が、きっと見つかるはずです。自分がどの分野で貢献したいのかを明確にし、必要な知識とスキルを着実に身につけることが大切です。
そして何より、「アニメが好き」という気持ちを忘れないでください。代々木アニメーション学院は、あなたの「アニメが好き」という気持ちを、プロとしてのキャリアにつなげるための環境を提供しています。夢は、追いかける価値があります。一歩踏み出す勇気を持ってください。
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よくある質問
アニメ業界にはどんな仕事がありますか?
アニメーター、監督、プロデューサー、脚本家、音響監督、制作進行、3DCGクリエイター、マーケティングなど、制作から宣伝まで多様な職種があります。
絵が描けなくてもアニメ業界で働けますか?
働けます。制作進行、音響スタッフ、3DCGクリエイター、プロデューサー、マーケティングなど、絵を描かない職種も多数存在します。
アニメ業界に必要な資格はありますか?
特定の必須資格はありませんが、制作進行など移動が多い職種では普通自動車免許があると有利です。
未経験でもアニメ業界に就職できますか?
できます。新卒採用や未経験歓迎の求人もあり、専門校で学んだり、アルバイトから始めるなど複数の道があります。
文系出身でもアニメ業界で活躍できますか?
活躍できます。プロデューサー、脚本家、制作進行、マーケティングなど、文系のスキルを活かせる職種が多数あります。
3DCGクリエイターの需要は高いですか?
非常に高いです。キャラクターモデリング、背景制作、エフェクト制作など、様々な場面で3DCGクリエイターが求められています。
アニメ業界の労働環境は改善されていますか?
大手制作会社を中心に、正社員雇用の拡大や福利厚生の充実など、労働環境の改善が進んでいます。
海外でアニメの仕事をすることは可能ですか?
可能です。日本のアニメスタジオの海外拠点や、国際共同制作プロジェクトへの参加機会が増えています。
専門校で学ぶメリットは何ですか?
現役プロから実践的な指導を受けられ、在学中から制作プロジェクトに参加でき、就職サポートも充実しています。
プロデューサーになるにはどんな経験が必要ですか?
制作進行から始めて現場経験を積み、制作デスク、アシスタントプロデューサーを経てプロデューサーになるのが一般的です。
アニメ業界で長く活躍するために大切なことは?
技術の向上を続けること、新しい表現方法を学ぶ姿勢、そして作品への情熱を持ち続けることが大切です。
フリーランスの収入は安定しますか?
スキルと実績により異なります。高い技術力と継続的な仕事の確保、人脈作りが安定につながります。
この記事を監修したのは?
柳瀬泰久先生(代々木アニメーション学院アニメーション学部長)
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