卒業生特別授業! アニメ監督・松田清さんによる業界講座を開催しました!
2024.10.07
代々木アニメーション学院は1978年の創立以来、12万人以上の卒業生を輩出してきました。さまざまな職業に代アニの卒業生がいるため、国内アニメの中で代アニ生が関わっていない作品はないとまで言われるほどです。
そんな卒業生たちは、さまざまな形で卒業後も代アニと関わっています。オープンキャンパスのイベントにゲストとして来校してくれたり、入学案内書などでOBOGとしてインタビューに答えてくれたりと、代アニとしては卒業後も業界で立派に活躍している姿を見られて嬉しい限りです。
その中でも、卒業生が在学生向けに行ってくれるイベントが「特別授業」! 業界で活躍する先輩のリアルなアドバイスやエピソードを聞けるため、とても勉強になる授業です。
2024年9月17日、代アニ東京校でアニメ監督の松田清さんによる特別授業を開催しました! この授業はオンラインで各校を繋ぎ、全国9校舎のアニメーション学部生が参加しました。
司会進行はアニメーター科、アニメ監督・演出科講師の柳瀬先生です。なんと、松田さんは柳瀬先生の教え子! 活躍する教え子の凱旋とあって、柳瀬先生は嬉しそうでした!!
松田さん、よろしくお願いします!

代アニに入学したきっかけ
子どもの頃からアニメは好きだったけれど「業界に入りたい!」と思ってはいなかった松田さん。しかし、高校を卒業して社会人生活を送るなかで「1度きりの人生だから興味あることをやってみよう!」と思い立ち、代アニへの入学を決めたということです。昼は授業、夜はアルバイトというサイクルは「大変だったけど充実していた」と振り返った松田さん。社会人を経て入学していたので周囲より年上でしたが、同じ夢を目指す者同士、同期とは良い意味で垣根なく付き合えたということです。
本格的に絵を描いた経験がなかったので、同期の中ではうまい方ではなかったと語る松田さんはしかし、仲間でありライバルである同期と切磋琢磨して技術を磨いていきました。
「うまい人の作品を見ることができるのは大きかったですね。実際に目で見ると違います」
柳瀬先生の「今でも同期と付き合いはあるの?」という質問に、「卒業後も連絡を取っていますし、同じ作品で一緒になったこともあります」というお答え。かつて一緒に学んだ友だちと、製作現場で一緒になれることは素晴らしいですね! また、これは多くの卒業生を輩出している代アニのあるあるでもあります(笑)!!
松田さんは「多くの同期と競い合えるところは、本当に代アニの良いところです」と話しました。
アニメーターから演出へ


松田さんは入学時から監督や演出を目指していました。それには出身に関わる秘密があったのです……!
松田さんの出身地は山口県宇部市。そう、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズで有名な庵野秀明さんと同郷なのです。
学生時代にTVシリーズの『エヴァ』を観ていた松田さんは、「地方から出て、東京のアニメ業界で立派に活躍している人がいるんだ!」と思い、自然と演出・監督に惹かれるようになりました。
福岡校にはアニメ監督コース(現アニメ監督・演出科)はなかったのですが、柳瀬先生が「アニメーターから演出や監督になった人はたくさんいる。庵野さんだってそう」と言われ、アニメーター科へ入学しました。
2年間でスキルを磨き、卒業制作のアニメ作品では監督を務めました。アニメ背景美術科や声優タレント科など各学科と連携を取って制作するシステムは、実際の制作現場そのもの。
「この経験を学生時代にできたことは大きかったです」と松田さんは語りました。
松田さんは卒業後、制作会社に入社します。入社試験でも「演出・監督になりたい」と社長に表明しており、さらにその会社が「手を挙げたらチャンスをくれる」社風だったため、松田さんは入社して3ヶ月で原画、なんと10ヶ月で演出を任せてもらえることに。
その秘訣について「口に出して回りに言うこと。するとチャンスは廻ってきます」と松田さんは言います。
しかし、手取り足取り教えてもらうということはなく、自分で周りから学んでいくことでスキルを高めていきました。
さまざまな現場で、先輩クリエイターの仕事を見ながら、技術を覚えていきます。
そうして松田さんは活動の場を移しながらステップアップし、現在は株式会社MAPPAで監督・演出として働いています。
入学時に「本格的に絵を描いた経験がなかった」松田さんが、自分がやりたいことに向けて努力して夢を叶えている姿は、今まさに代アニで学んでいる学生にとって自分の将来を想像する道しるべになっているように感じました。
はじめは、みんな素人なのです。
アニメ制作にのあれやこれや
松田さんは制作会社に入社してから現在の監督に至るまで、貴重なお話をさまざま提供してくれましたが、すべてを聞けるのは在学生の特権!
ということで、ここでは抜粋して紹介させていただきます!
演出と監督
演出は、放送する各話の責任者です。各セクションと打ち合わせを重ね、中身を作っていきます。打ち合わせでは、尺が長いのでカットしようとか、セリフを調整しようとか、制作に関する具体的な判断を下していきます。
「いかにしてクオリティを担保していくか」を考えて実行するポジションということですね。
一方の監督は、演出の延長の仕事ですが、莫大な予算を預かる立場になるぶん、責任がより重くなります。
必然的に、演出よりも多くのセクション(プロデューサー、デスク、美術監督など)との連携を密にしなければならず、それによって作品のトータルとしてのクオリティを管理します。
また、声優のキャストや音楽まわりの管理、宣伝、監修などの仕事も監督が関わります。
リアルさの追求
アニメをまさにそこにあるように描くには、現実を研究することも大切です。
たとえば題材がスポーツなら、実際にプレーしている姿を撮影して体の動きを分析する。
料理なら材料を切ったり炒めたりする様子を撮影する。作ったものを食べるところも撮影して、「かじられたら肉はどう動くのか」などリアルさに必要な要素をチェックする。
また、どういう色味なら魅力的に見えるか。どの角度の画なら印象的になるか、など細かな点も考えられてアニメが作られていることがわかりました。
絵コンテと演出
絵コンテについて、演出が切る(描く)場合もありますが、最近の傾向として「わかりやすい」コンテが重視されると松田さんは指摘します。
意図と異なる絵が上がって何度もリテイクを発生させると手間と時間がかかりますので、原画マンが描くためにわかりやすいコンテが必要になってくるということですね。


教えて! 松田先生
松田さんに、学生からの質問に答えていただきました。監督に尋ねられる機会はそうないと、多くの学生が質問を投げかけていました。
そのうちのいくつかを紹介します!

作品の制作時、セクション間で意見が衝突した場合はどう対処していますか?
作品として譲れるか譲れないかを判断基準にして、「ここは削るけど、ここは残しましょう」という風に調整します。
1つの作品をより良くするためなので、基本的にはまとまります。
「絶対譲りません!」みたいな暴れん坊は、最近はいないように感じますね。
アニメーターになる上で一番大切なことは何だと思いますか?
惰性で描かず、課題を見つけて楽しんで描くこと。
あとは健康維持!
腰や首を痛めて描けないなんてことにならないように、意識的に身体をケアしてください。
松田さんからメッセージ
最後に、松田さんからアニメ業界を目指す学生にメッセージをいただきました。
私は目の前の壁を一つずつ乗り越えて、今の立場まで歩んできました。皆さんも、惰性で課題に取り組むのではなく、これが自分の将来のスキルアップ、ステップアップに繋がると思って日々精進してください。
そして自分が得意な武器を磨きましょう。例えばアクション描写やエフェクト、動物の表現……などなど。「自分にしかできない」ジャンルを確立すると、素晴らしい武器になります。
そのためにも、日ごろからアニメ以外の分野をいろいろ学んでみてください。
音楽ライブに行くでも、舞台を見るでも、何でもOK。これまで興味がなかったことに目を向けてみるのもいいかもしれませんね!
絵の練習も大切ですが、引き出しを増やすことも大切です。もちろん、どんな絵も一定レベルで描けなければなりません。
業界は今、作品の数に対して、信頼して仕事を任せられる人材が足りていません。皆さんが早く一人前になってくれれば、制作会社も大変助かります。
労働時間や給与など環境は昔に比べると格段に良くなり、働きやすくなっていると感じます。
代アニで仲間と切磋琢磨して業界に入り、一緒に頑張りましょう!
松田さん、貴重なお話を本当にありがとうございました!
将来一緒に仕事させていただけるよう、日々精進していきます!!
代アニは今回特別授業をしていただいた松田さんをはじめ、トップクリエイターを数多く輩出しています。
代アニだからできる最先端のカリキュラムが、皆さんにクリエイターへの道を拓きます。
アニメーターやアニメ監督に興味がある! エンタメ業界で働きたい!!
という方、ぜひ代アニで学んでみませんか?
オープンキャンパスも開催しているので、ぜひお気軽にお越しください!