卒業生特別授業! 浅野真澄さんによるアフレコ実習を6校で開催!
2024.09.25
代々木アニメーション学院は1978年の創立以来、12万人以上の卒業生を輩出してきました。さまざまな職業に代アニの卒業生がいるため、国内アニメの中で代アニ生が関わっていない作品はないとまで言われるほどです。
そんな卒業生たちは、さまざまな形で卒業後も代アニと関わっています。オープンキャンパスのイベントにゲストとして来校してくれたり、入学案内書などでOBOGとしてインタビューに答えてくれたりと、代アニとしては卒業後も業界で立派に活躍している姿を見られて嬉しい限りです。
その中でも、卒業生が在学生向けに行ってくれるイベントが「特別授業」! 業界で活躍する先輩のリアルなアドバイスやエピソードを聞けるため、とても勉強になる授業です。2024年8月後半から9月頭にかけて、代アニ仙台、広島、金沢、札幌、福岡、名古屋の各校でこの特別授業を実施しました! 講師は、代アニ卒業後、声優やラジオパーソナリティ、歌手など幅広いジャンルで活躍し、近年は作家としても素晴らしい才能を発揮している浅野真澄さん!!
よろしくお願いします、浅野先生!
現役声優・浅野さんによるアフレコ実習
今回浅野さんが担当した特別授業は「アフレコ実習」。実際に放送された作品の素材を使ってテストと収録を行い、浅野さんにアドバイスや講評をしてもらいます。
まずはテスト収録。マイクワークや共演者の演技プランなどを各自チェックします。浅野さんが一緒にブースに入るので、学生はいつもの授業より少し緊張しているように見えました(笑)。
テスト収録しながら、浅野さんは気付いた点を指摘。学生たちは真剣な表情で頷いていました。実際に現場で活躍する声優の言葉を聞けるのは代アニならではですね。
テスト収録を終えると、次は全体へアドバイス。実際の収録現場では、テストの後にディレクターから「もう少し老けて」「息多めで」などのディレクション(演出)を受けます。また、学生は素材を事前に渡されており、自宅で練習などできる状態でした。これもまた実際の収録と同じです。つまりこの授業形式は本番を模しているというわけです!
事前チェックを大切に
テストを終えて、浅野さんからアドバイスを受ける学生たち。浅野さんは「実際の現場ではこうだよ」と丁寧に説明してくれます。
そのアドバイスを紹介します!!
自分のキャラクターをしっかり分析しよう
→息遣いやリアクションでもキャラクター性を表現できるので、チェックの段階で「このキャラクターならこう動く」を自分の中でクリアにしておきましょう! 例えばアクションシーンでアドリブを入れられる場所なのに入れないと、「あれ、どうした?」と言われることがあります(笑)。
セリフとモノローグを使い分けよう
→セリフは他者、モノローグは自分に語っています。対象が違っているので、話し方も自然と変わるはずです。新人声優がよく現場で「同じだよ」と注意されるポイントなので、オーディションでも使い分けて演じられるとアピールポイントになるかもしれないですね。
場面が変わったら状況に応じて演技を変えよう
→例えば室内から屋外に変わった時、同じ人物同士の会話でも距離感や声の大きさ、トーンも変わるはずです。前の場面と場所や時間、周囲の状況などが異なることを意識して、見ている人にもそれが伝わるように演技しないといけません。ここもディレクターに「場面が変わっていないよ」と指摘されるポイントなので、気を付けましょう。
マイクとの距離を常に意識しよう
→収録のマイクは高性能なので、近過ぎると余計な音が入ってしまいます。なのでしっかり距離を取らなければいけません。しかし皆さん緊張したり、演技に力が入ったりすると近付いてしまいがち。意識すれば絶対に出来るので、「台本のタテ」分の距離を常に取れるように日頃から練習してください。基本中の基本なので、ここで注意されないようにしましょう。
他にもたくさんアドバイスをいただきましたが、総合すると「事前チェックをしっかりして、演技プランを考えよう」ということでした。
もちろん学生たちも自分たちなりに実践していることですが、プロはその深度と角度と精度のレベルが違う、という風に感じました。
現役で活躍する声優ならではの視点、そして新人にありがちなポイントも丁寧に教えてくれました!
本番、そしてチェック……!
果たして直前に受けた浅野さんの指摘を演技に反映できるのでしょうか……?
授業とはいえ本番です。独特の雰囲気が漂うスタジオで、マイク前に立ち演技を披露する学生たち。
そばで優しく見守る浅野さんの視線が、より緊張感を高めている気もします(笑)。
そして何とか無事に本番の収録終了! 全員で映像を見返した後、浅野さんに講評をいただきました!
言われたことを素直に受け入れて、直そうとしている姿勢が良かったです。まだまだ出来ていないところもあるけど、勉強を始めたてにもかかわらず、これだけ対応出来たことは素晴らしいですね。
これからは、細かいところにも目を向けてこだわってみてください。例えば同じセリフでも、言い方一つで印象がガラッと変わります。
友だちに向けて言う「何?」と理解できないものに向けて言う「何?」は全然違うはずです。
「何?」というセリフを友達と言い合って、「これはどんな気持ちでしょう?」と当て合いをしてみてください。もちろん、言うたびに込める気持ちは変えること!
相手が発した音にどんな気持ちが込められているかを読み取ると同時に、「自分の表現が相手にどう伝わるか」を学べます。
現場ではこういうちょっとした違いが評価されます!
教えて! 浅野先生
授業の中で、浅野さんへの質問を募集するとたくさん手が上がりました!
学生の言葉一つひとつをしっかりと聞き、緊張気味な学生には助け舟を出すなど、20年近く活躍してきた声優さんの対応力はさすがだなと感じました!
そんな浅野さんからいただいたお答えを紹介します! 他にもいろいろありますが、すべて聞けるのは現役生だけの特権です!!
Q.感情的なシーンで気を付けることはありますか?
A.きっかけを意識する
キャラクターの感情が動くシーンでは、そのきっかけが大切です。
例えば怒るシーン。何となく怒るのではなく、きっかけのセリフで怒りの感情が湧かなければ不自然です。
つまり、「怒りやすい言い方」を受けないと、うまく怒ることができません。
逆に自分が相手を怒らせるセリフを言うなら、相手が怒りやすいような演技プランを立てなければならないということです。
そういう時は少し強調して、小さじ一杯分くらい気持ちを盛ってみるのがいいと思います。
自分の前のセリフ、後のセリフが、全体の流れにどういう影響を与えるか。それを考えて演技できるようになると良いですね。
ただし、相手のセリフがいつもあるとは限らないということも覚えておいてほしいです。ゲームは基本的に1人で収録しますし、アフレコも抜き撮りがあります。
また、相手のセリフが、自分が想定していたものより足りないこともよくあります。プロの現場でも、そういう食い違いはあります。
なので、自分のキャラクターの感情はどういう風に変化をして、なぜ今ここで怒るのか、ということをしっかりと自分に落とし込んでおくことが大切です。
もちろんきっかけセリフは大切です。ですが、相手がいようといまいと、自分の中で嘘偽りない気持ちを作れるようにしておきましょう!
Q.緊張への対処法はありますか?
A.自信を付ける!
緊張の原因は不安です。それに打ち勝つには、自信しかないと思っています。
例えば収録に臨むなら、たくさん練習をして「自分なら絶対に大丈夫!」というマインドを持てるようにしましょう。
私もステージに立つ時はそうしていました。
根拠のない自信ではなく、自分が積み重ねた経験から生まれる自信が緊張を和らげてくれます!
Q.台本と異なる演技プランが出来た場合、どうしたらいいですか?
A.まずはやってみよう
例えば台本に「……」と書いてあった場合、息を入れたりして表現します。
しかし、キャラクターを掘り下げて演技プランを探った結果、「このシーンで息は出せないな」と思ったら、まずテストでやってみましょう!
そしてディレクターに自分の意図を説明して「大丈夫でしたか?」と確認しましょう。
ディレクターは意見を汲んだうえで、「やっぱり入れてください」などディレクションしてくれます。
浅野さんからのメッセージ
授業の最後に、浅野さんから学生に向けてメッセージが送られました。
声優は厳しい世界です。
人から選んでもらって初めて仕事が出来る職業です。
アニメなどの作品には多くの方が関わっており、その最後の仕上げを「あなたにお願いします」と任される職業です。
そういう人はどういう人だと思いますか?
私の知る限り、選ばれ続けて長く活躍している声優さんたちは皆、個性的であることは前提のうえで、人格者だし魅力的です。
皆さんも、「選ばれる人とはどういう人か」を常に考えて学生生活を送ってみてください。
浅野さん、ありがとうございました!
一人でも多く、いつかどこかで「あの時教えてもらった学生です!」とお伝えできるよう精進していきます。