【芸能スタッフ学部】特別授業レポート 2.5次元ミュージカルの先駆者が語る今後の展開

2025.05.21

4月10日、代々木アニメーション学院東京校芸能スタッフ学部にて、株式会社ネルケプランニングによる特別授業が開催されました。
代表取締役社長の野上祥子さんが登壇し、舞台制作の裏側や魅力、今後の展望についてお話しいただきました。

このレポートでは、2.5次元ミュージカルの先駆者からお話しいただいた「海外進出について」や、舞台を通じて「成し遂げたいこと」などを紹介します!

ネルケプランニングってどんな会社?

株式会社ネルケプランニングは、2.5次元ミュージカルを中心に、舞台・イベントの企画・制作を手がける会社です。

1994年の下北沢にある小さな劇場での公演から始まり、現在のようにさまざまな作品を行うようになるまでの沿革を教えていただきました。
今ではジャンルとして確立している「2.5次元ミュージカル」がどのようにスタートしたかについて、野上さんは次のように話しました。

私は昔から「好きなマンガのキャラクターがいたとしたらどんな俳優がいいだろう…?」と想像することが好きでした。
この想像が実現したら面白いかもしれない!という閃きが、2.5次元ミュージカルが生まれたきっかけのひとつだと思っています。
そして私が実際に携わり、成功した作品が2003年のミュージカル『テニスの王子様』でした。

とにかく原作をリスペクトして、観る人が「作品の世界を体験することができる」舞台を作り上げようと丁寧に取り組んだ結果、多くの方に評価していただけました。

このミュージカル『テニスの王子様』のヒットを受けて、2003年は40本だった年間制作タイトル数が、わずか3年後の2006年には、なんと70本以上になったそうです。
他にもロングラン作品や、海外展開した作品など多くあるため、各作品のダイジェスト版動画を流しながら紹介いただきました。

2.5次元ミュージカルの海外進出

2.5次元ミュージカルという新たなジャンルの開拓以外にもネルケプランニングは、生バンドやLED演出、ライブビューイング(全国の映画館で公演を同時生中継)、ライブ配信、子どもたちも楽しめる舞台(WELCOME KIDS PROJECTなど、当時はまだ目新しい施策に挑戦した作品づくりをしてきました。

新たな取り組みを続けている野上さんに、今後の展開について聞いてみました。

日本の舞台・ライブエンターテイメントは海外からも注目されているため、海外での活動や、国内での外国人観光客に向けた活動に力を入れています。

例えば、「進撃の巨人」-the Musical- は、ニューヨークにある New York City Center で上演しました。
作品として、キャストが多く、大きな舞台セットも必要不可欠だったため、カンパニー(出演者やスタッフなど作品に携わる人たちの総称)は大規模になり、忙しさも段違いでした。
さらに、海外での働き方のルールに合わせて準備しなければならないなど、気を付けるべきこともたくさんありました。

一方で “Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live では、キャストと最低限の人数のスタッフで挑みました。
2025年2月~3月のロンドン公演と、3月~4月の北米ツアーという内容だったため、それぞれ現地のスタッフに引き継いで、全てを託して作り上げました。

これにより、大人数・少数精鋭どちらのパターンでも海外公演の経験を得られました。
次に私たちがすべきことは、海外公演を成功させる仕組み作りを確立することだと思っています。

また、日本国内の公演でも、外国人観光客のアクティビティとして観劇の需要が高まってきました。
だからといって、2.5次元ミュージカルを始めたときと大事なことは根本的には変わらず、ひたすら原作と向き合って丁寧に取り組んでいます。

日本で観た作品に感動した観光客の方が、自国に戻って、知り合い・友人を連れて海外公演に来てもらうなど、次の行動に作用させるところまでを狙っています。

止まらない!質疑応答タイム

質疑応答の時間では、多くの学生が手を上げました。
予定時間が大幅にオーバーしたにもかかわらず、野上さんは一つひとつ丁寧に答えてくれました。
ほんの一部ですが、質疑応答の内容を紹介します。

Q.キャスティングに興味があります。
  オーディションの時に意識していることはなんですか?

A.
キャラクターと似ているか、歌やダンスのレベルも見ていますが、「一緒にキャラクターを作ってくれるか」が一番重要だと思っています。
判断基準の一例ですが「他の俳優の演技を受け止めて演じることができるかどうか」を見ています。
俳優
同士のキャッチボールができないと、原作のバランスが崩れるためです。

これは演者に限ったことではなく、舞台裏のスタッフもそうです。
照明・映像・大道具・衣裳…と、それぞれ職人が集まっていますが、同じカンパニーとして、原作をリスペクトして一つの作品を作るために高めあうことができる人を求めています。

「来てくださるお客様のため!」と同じ方向を見ている人が集まったカンパニーこそ、最高な作品を作ることができます。

ネルケプランニングとしても、このような人を増やせるように、また、このような人を育てるプロデューサーを増やすことが今後の課題でもあります。

Q.2.5次元ミュージカルでは演出の際、特に意識していることはなんですか?

A.
2.5次元ミュージカルとなると、原作ファンで「初めて舞台を観る」お客様がいます。
そういった方に「マンガのあのシーンだ!」「この演出はゲームと同じだ!」など、身近に感じてもらうようにしています。
こういった演出を本編に入れていくのはもちろんのこと、開演前の雰囲気づくりや、幕が上がるときのサウンドエフェクト(開演の合図)など、本編以外のところでも没入感をつくり、作品に引き込む演出を意識しています。

これを機に「舞台化も面白いんだね」と、興味を持ってもらい、演劇人口を増やしていきたいと思っています。

最後に

野上さんから舞台を通して成し遂げたいことを共有して、今回の特別授業は締めくくられました。

「期待」を越え、忘れられない「体験」を提供することが私たちのミッションです。

舞台やミュージカルは、1公演2~3時間くらいかかるものなので、気軽にサクッと観るものというよりも、今日はこれを観に行くといった「目的」となり、作品への「期待」が生まれます。
貴重な時間をいただいているため、その人の人生に影響を与える体験を提供したいと思っています。

日本の舞台・ライブエンターテイメント産業は、「期待」されている今だからこそ、まだまだ成長段階です。
そして、その成長のためにも仲間を増やしていきたいです。
みなさんも代アニで学び、一緒に高め合ってくれる仲間になってくれたらうれしいです。

野上さん、熱いメッセージまで、ありがとうございました!
学生も充実した特別授業になったのではないでしょうか。

代々木アニメーション学院では、これからも第一線で活躍する方をお招きして、業界のお話を聞ける機会を提供していきます。
アニメ・エンタメ業界を目指したい!という方はぜひオープンキャンパスへお越しください。

■野上祥子(のがみ しょうこ)さん プロフィール

大学在学中に劇団制作を経験し、1998年に株式会社ネルケプランニングに入社。
同社制作の舞台やTVアニメ、イベントのキャスティングを担当し、2016年に社長に就任。
2.5次元ミュージカルを中心に多ジャンルの作品を生み出し、本年4月からは関西エリアのFMラジオ局「 FM COCOLO 」にてラジオDJに初挑戦するなど常にチャレンジを続けている。1児の母。
代表作はミュージカル『テニスの王子様』、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」、舞台「呪術廻戦」、劇場版アニメ「雲の向こう、約束の場所」(監督:新海誠)他。

■株式会社ネルケプランニング
1994年設立。
2.5次元ミュージカルと呼ばれる漫画・アニメ・ゲームを原作としたミュージカル作品を中心に多くのエンターテインメントを世の中に送り出す。

<代表作>
ミュージカル『テニスの王子様』シリーズ
ミュージカル『新テニスの王子様』シリーズ
ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ
MANKAI STAGE
A3!』シリーズ
『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-Rule the Stageシリーズ
舞台『魔法使いの約束』シリーズ
舞台「鬼滅の刃」シリーズ
HUNTER×HUNTERTHE STAGEシリーズ
「マッシュル-MASHLE-THE STAGE など

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